▼館長の写真日記 令和6年8月22日付け
博物館に限らず、施設管理の基本に「草取り」というのがあります。山形の場合これに「雪掃き」が加わります。実際はそんな風物詩のようなことではなく、機材による「除草」とか「除雪」といった作業になるのですが、当館は良くも悪くも零細博物館で、また、公園敷地の中にあるため、草取りを要する場所はほとんどありません。しかし、当館裏の一般立ち入り禁止の公園敷地には、野草が伸び放題になっています。
敷地裏側の伸び放題の野草近影
中でも勢いがあるのが、洋種山牛蒡(ヨウシュヤマゴボウ)というアメリカヤマゴボウとも言われる山牛蒡の仲間です。その実は紫色の染料にもなり、手や服につくとなかなか色が取れず、アメリカではインクベリー(Inkberry)とも言われ、日本でもインクの木などと呼ばれることもあります。実はたっぷりとなり、ヤマブドウの一種と勘違いされることもあります。ヤマゴボウなのにヤマブドウのような実がなるというわけのわからない植物です。
ヨウシュヤマゴボウの実
ただ、この洋種山牛蒡には、根も葉も実も全てに毒があり、最悪の場合は死に至るといいます。しかしその実は、いかにも食べられそうに見えるため、これを幼児などは口にする危険性があります。一方、鳥には毒性がないのか、実をよくついばみ、その分、種を運ぶようで、洋種山牛蒡は付近のあちこちに繁殖します。気づくと一か月ぐらいでかなり大きく育ち、その根は時にサツマイモのような大きさになります。
厚生労働省のHPには「自然毒のリスクプロファイル」というリストがあり、それによると、食べると腹痛・ 嘔吐・下痢を起こし、ついで延髄に作用し、けいれんを起こして死亡、発病時期は2時間とあります。皮膚に対しても刺激作用があるとのこと。にもかかわらず、実のついたものを花屋でみかけることがあります。生け花に使うようです。なお、味噌漬けなどにされる山菜の「山ごぼう」は、このヤマゴボウとは全く異なるキク科に属するモリアザミなのだそうです。
意外だったのが、同じリストにアジサイ(紫陽花)があることです。アジサイなんか食べないだろう、とは思うのですが、料理の下敷きに使われたものを食べて中毒症状を起こしたりするそうです。厚生労働省のHPにも、料理に添えられていたアジサイの葉を食べた 10 人のうち 8 人が、食後 30 分から吐き気・めまいなどの症状を訴えた例や、居酒屋のだし巻き卵の下に敷かれていたアジサイの葉を食べ、40 分後に嘔吐や顔面紅潮などの中毒症状を起こした例が掲載されています。いずれも重篤には至らず、3日程度で回復したそうです。中国では、アジサイそのものが八仙花(はちせんか)と呼ばれる生薬となっており、抗マラリア剤とされるが、やはり嘔吐性が強いので頻用はされないそうです。アジサイは毒にも薬にもなるようです。
一方、このリストにはないのですが、毒性をもつことで有名なのがキョウチクトウ(夾竹桃)です。その名のとおり、葉の形が竹の葉に似ており桃色の花を咲かせます。この花はバラに劣らず美しく背丈もあり庭木にもってこいの植物で、かつては玄関口など身近な場所に鉢植えや地植えなどで植えられていたのですが、その毒性が知られるようになり注意を促す自治体もでてきました。
キョウチクトウの花と葉
夾竹桃は、花、葉、枝、茎、全ての部分に、青酸カリよりも毒性が強いと云われる有毒物質を含んでいるそうです。下痢や心臓麻痺などを引き起こし、成人では、キョウチクトウの葉5〜15枚で致死量に達するといわれています。実際に小さな子供が夾竹桃に触れてしまい、夾竹桃中毒になって亡くなってしまった例があるそうです。ペットや剪定の時なども夾竹桃に触れないよう注意が必要です。また、夾竹桃の枝や葉を燃やすことで有毒ガスが発生し、吸引すれば下痢や嘔吐といった症状がでます。これも死に至ることがあるそうです。
フランスでは普仏戦争の時、野外でバーベキューをしたところ串が不足したので、夾竹桃の生枝を串にして肉を焼いて食べ、11人中7人が死亡したとか、日本でも西南戦争の時、官軍の兵隊が夾竹桃の箸で弁当を食べ中毒者を出したということがあったそうです。山形名物の芋煮の季節もそろそろです。夾竹桃を串にしたり箸にしたりされないよう気を付けましょう。
( → 裏館長日誌へ続く)
2024/08/22 16:00:最上義光歴史館
→HOMEへ
(C)最上義光歴史館