▼館長の写真日誌 令和8年4月16日付

桜花と最上義光騎馬像


堀の花筏を進むステージ筏

 今年の桜の開花は、山形でも例年になく早いものでした。4月11日、12日には、山形城を会場に観桜会が催されましたが、前日の雨で、満開と同時に桜吹雪となりました。まさしく「三日見ぬ間の桜」ということですが、これは江戸時代の俳人・大島蓼太の「世の中は三日見ぬ間に桜かな」という句からとられたもので、3日も見ないうちに桜が散ってしまうように、世の中の様子が激しく変わってしまうことをたとえているとのこと。まさしく今の世もこんな感じでして。
 さて、当館では「鐵[kurogane]の美 2026」〜『出羽の三名人』と現代の匠 〜と題し、10振りの刀剣を展示しています(会期4月2日〜7月5日)。新々刀の名工、水心子正秀と大慶直胤、藤原清人、そして現代の匠上林恒平氏と弟子の煖エ恒厳氏の作刀です。刀剣展示は毎年―好評で、毎度これを目的に来館される方がいる、つまり当館では数少ない、リピーターが望める有力企画ではあります。
 またこの間、市当局からはインバウンド対応をぬかりなく、という指示がありまして、今年は刀剣解説の英文リーフレットも用意しました。ただ、刀の部位名等はそのままローマ字表記せざるを得ないことが多く、例えば鎬は「shinogi」、茎は「nakago」という具合です。とにかく名称(人名・地名・品名等)が多い場合は、それだけで翻訳は困難になります。また、英語圏ばかりともならないわけで、実際、山形市に多いのは台湾からのお客様で、すると中国語も「簡体字」だけではなく「繁体字」も用意する必要があります。山形にはタイからのお客様も多いらしいのですが、AIでタイ語に翻訳すると、文章がどこで区切れているのかわからず、恐る恐る出力されたまま掲示しています。タイは仏教国なので年号も、例えば「慶長5年」は「仏歴2143年」となりますが、まあ、そこまで丁寧にしなくても「A.D.1600」で表記すればいいのかと。
 また、翻訳解説ではその基礎となる「やさしい日本語」による表記が必要となるのですが、これもなかなか手間どります。ところが当館学芸員がAI翻訳を使ううまい方法に気付きました。それは日本語の原稿を一度英文に訳して、それをまた日本語に訳すると、とても整理されてスマートな表現に変換されるので、これを基本文として多言語にAI翻訳するというものです。とにかく人名や地名等以外はかなり間違いのないものになります。
 とは言え、当館で扱うものは、単なる翻訳だけでは理解困難なことも少なくありません。歴史的な背景がわからないと興味関心すら得られないも少なくないのです。例えば「戦国時代」、英訳ではそのまま「The Sengoku period」、意訳でも「The Warring States period」となるのですが、なぜそんな時代名なのか説明が求められるかと。「室町時代」とか「江戸時代」とかは、治世者がいる場所の名であると説明すればいいのですが、「戦国時代」というのは場所の名ではないわけです。ざっくりと言えば、応仁の乱により室町幕府の権威が失墜し、下剋上が全国に広がった乱世であった、つまり治世者がつぎつぎと変わったためです。これで普通は終る話なのですが、とにかく予備知識ゼロからの説明なので、次は「応仁の乱」についての説明になります。なお、「下剋上」は「the low overcomes the high」とか、あるいは簡単に「upset」とも言うようですがこれだと「ちゃぶ台返し」のようなニュアンスになってしまうような。ちなみに日本の解説では「実力主義」とも説明されていますが、これも微妙に違うような感じかと。
 さて、この応仁の乱(1467-1477)の主な原因は、AIさんによれば、室町幕府8代将軍・足利義政の跡継ぎ問題と、有力守護大名の権力争い、そして畠山・斯波両家の家督争いが連鎖的に重なったことによるそうです。この斯波(しば)氏というのは足利将軍の一門で、細川氏・畠山氏と交替で管領に任ぜられる有力守護大名です。
 さてさて、このあたりになると俄然、興味関心が続かなくなります。例えるなら、イギリスのテューダー朝(1485–1603)にいたるヘンリー6世やらヘンリー7世やらの話のようなもので、薔薇戦争がどうしたとかシェイクスピアがどうしたとか言われても、ご当地の方には常識でも、こちらとしては何のことやら、というのと同じでして。斯波家は最上家の祖はであり足利氏とも深く関係するのですが、その説明に行きつくまではそれなりの忍耐力が必要です。特に家系をたどる話は、見も知らぬ人物名ばかりが次々とでてくるわけで。
 ということで、刀剣などの方が興味関心が得られやすいかと。今回は新々刀の名工、水心子正秀らの刀とともに、現代の匠として上林恒平氏と弟子の煖エ恒厳氏の刀を展示していますが、その師匠と弟子の刀が何とも対照的で、ほぼ同じ時期、同じ重量にもかかわらず、師匠の刀はたっぷりとした趣があるのに対し、弟子の刀はシュッとした細身で清新さがあり、是非そうした所などもご覧いただければと思います。

(→裏館長日誌に続く)
2026/04/16 17:15:最上義光歴史館

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