▼【5】 奥羽永慶軍記の「最上義光、騎馬揃の事」の地、天童の野はどこか
奥羽永慶軍記の「最上義光、騎馬揃の事」の地、天童の野はどこか【5】

5.天童原について前掲4の歴史的背景を探ってみる。

(1) 前掲4の(1)出羽一國之絵図…図−1について 

《図−1》 「出羽一國之絵図」致道博物館所蔵
 若木御林の歴史としてE「神町のむかし」に横尾家文書「諸事留帳」によると次のとおりである。正平年中(1346-1370)より若木原は東根村にて支配していた。とあり、延宝年中(1673-1681)御立林にしたという。「立林」とは、林を藩有として狩猟・伐採を禁止していたが、枯枝、落葉取り、下草刈などを東根、乱川、万善寺、野田、新町新田(=神町)、原方、沢渡、天童、後沢、川原子、小関、道満12ヶ村の入会は許されていた。御林内脇には、秋田・庄内・津軽などの旅人の通行があり、野火入があり、元新町新田、天童両村の取締などの負担は大きなものであった。
 天童、元新町新田両村より若木御林を天童原と云っていたと述べられている。
  
(2) 前掲4の(2) 出羽一國之絵図…図−2について

《図−2》 「出羽一國之絵図」致道博物館所蔵
 4の(2) 出羽一國之絵図…図−2の寺原は、元和8(1622)年最上家が改易になり、鳥居忠政が山形城主として入部し、城を改築した時の様子がF「山形風流松木枕」に次のように記している。「…山形御城築之節、山形立石寺の持分の寺原と云有、清和天皇この方、此松林大木ニして真直クにて、三里の道法門前と成て有しを、難渋を云掛、立石寺ゟうばい取、我領内として伐取、城を普請す…」とある。
 宝暦11(1761)年のG荒谷村指出明細帳には荒谷原御林として239町歩余、本数282,233本と記録され、1本に占める面積は約8.5uと樹林の密度は高いことがわかる。
 このことからも3,720余騎が一同に集まる空間を見出すのは困難と思われる。

(3) 前掲4の(3)堀田藩時代の山形藩絵図…図−3、(4) 大日本帝國陸地測量部発行「仙台」…図−4の天童原は出羽一國之図から踏襲されたものと考えられる。

《図−3》

《図−4》

(4) 全景4の(5) 大日本帝國陸地測量部発行「天童」…図−5、明治37年発行2万分の1地形図から慶長期の「天童原」を考えてみる。

《図−5》
 H天童付近の羽州街道の開削は、慶長8・9(1603・4)年頃と推定されている。従って、関山街道の開削はそれ以降であろう。それ以前に舞鶴山の西麓の侍屋敷(現天童市小路)から糠塚の西を通り、天童原を経て旧山口村原崎に至る道があり、これが現在の関山街道開削以前から利用された道で陸奥国へと連絡するものであったと思われる。
 この道の沿線に、昭和34年耕地交換整備工事中に古代住居跡が発見されI、「県下の土師住居跡群―天童光戒壇―」として山形大学柏倉亮吉氏らによって発表された。「発掘などまだ行っていないので正確な事は不明としながら、かなりの数の住居跡が密集していると思われる」と論じている。その後、この集落は新たに開削された関山街道へと移転したのだろうと思われる。

(5) 前掲4の(6)国土地理院発行「天童」…図−6、国土地理院発行2万5千分の1地形図には天童原と記されているが、その範囲は国道13号線から東側で天童市立第二中学校(文)、山形県立天童高等学校(文)などが含まれ、第二中学校の北東の角から破線写真-4、5、6参照と実線写真-7参照で図示され原崎に至る道が上記(4)でいう古道である。

《図−6》

《写真-4》 天童市立第二中学校 W=2,5m 

《写真-5》 天童小路〜原崎 天童原 W=2,5m 天童市立第二中学校東側

《写真-6》 天童小路〜原崎 天童原 W=2,5m 天童市立第二中学校東側

《写真-7》 天童小路〜原崎 天童原 W=2,5m 渡辺宅前十字路
  
(6) 前掲4の(7)ゼンリン住宅地図も上記(5)と同様となっているが、天童第二中学校から原崎へ至る古道は実線で記されている。幅は2.5m、軽自動車の通行が可能で現在農道として利用されている。
■執筆:矢野光夫 

【参考文献】
E「神町のむかし」 P.13〜14 平成17.30 神町歴史の会発行
F「山形市史資料」 第64号 山形風流松木枕 P.39 昭和57.11.30 山形市発行
G「天童市史編集資料」 第2号 P.85 昭和55.12.1 天童市発行
H「天童市史」上巻 P.382 昭和56.3.31 天童市発行
I「羽陽文化」 第46号 P.1 県下の土師住居阯郡 ―天童光戒壇―柏倉亮吉、山崎順子執筆
昭和35.4.5 山形県文化財保護協会発行


       
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2021/04/15 09:52:最上義光歴史館

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